新潟大学歯学部 野杁由一郎
最近、歯みがき粉などのテレビCMで「バイオフィルム」という言葉を聞いたことがないでしょうか?
今回は、このバイオフィルムとプラークの違いについて説明したいと思います。
バイオフィルムを直訳すると「Biofilm : 生体/生物膜」となります。歯の表面に形成されるバイオフィルムは「デンタルバイオフィルム」と呼ばれ、実は、デンタルプラークとデンタルバイオフィルムは同じ物質(物体)の呼称です。歯学的な概念が最近変わりつつあって、最近は「デンタルバイオフィルム」が広く使われるようになっているのです。
近年の研究で、プラークの中にいる細菌の挙動や状況が明らかになってきました。
プラーク中の細菌は、単に歯の表面に取りついてかたまっているだけではありませんでした。実は、異なる細菌の間でコミュニケーションをとって、生活共同体を形成していることが、研究で解明されてきました。つまり、単純な「塊:プラーク」ではなく、「バイオフィルム:生体/生物膜」だったというわけです。
【バイオフィルムの形成】
デンタルプラークの中で細菌が共存するメカニズム
デンタルバイオフィルムは、歯の表面や歯間以外にも存在します。口の中だけでも、いろいろな所(インプラント、舌、粘膜、義歯など)で散見されます。歯の根っこにある管にもバイオフィルムが形成されることがあり、疾病を引き起こします。
入れ歯(デンチャー)のバイオフィルム
生活科学の領域でもバイオフィルムは頻繁に見られ、例えばコンタクトなどの人工医療材料、キッチンのストレイナー、循環式浴槽などで発生することもあります。また、食品の腐食にも関連し、問題を引き起こすことがあります。
口の中のバイオフィルムを少なくすること。それが歯磨きなど、口のケアの最重要ポイントです。